引越しの経験

今まで、何度かの引越を経験してきました。大学に通うために、田舎から東京に出て来たとき、就職で、成田空港の近くに住むことになったとき、その仕事をやめて、田舎に帰ったとき。そして、再び東京に出てきたとき。
 私が、新居に荷物を運び込んで、まず、することは、ラジオのスイッチを入れること。そして、適当にチャンネルを回して、最初に入った番組を聞きながら、片付けを始めるのです。新しい土地で、初めて聞くDJの声に、「ああ、引っ越したんだな~」と実感するのでした。一箱ずつ、荷物を開けて、片付けて行く作業は、なかなか終わりが見えないものです。しかし、引っ越した気分が冷めない内にやってしまわないと、永遠に箱に入ったままのものが見つからず、また同じものを買ってきたりと、とんでもないことになってしまいます。テレビだと、配線しなくてはならないし、何より見入ってしまって、結局、作業が進まずに終わってしまうことになります。いくどかの引っ越しの中で一番性に合うのが、ラジオをつけて、片付けを行う方法だったのです。ポータブル音楽プレイヤーだと、どんなに多くの曲を入れていても、知っている曲しか流れてきません。その点、ラジオは、全然知らない曲が流れてきて、気に入っても入らなくても、飛ばして次を聞いたりすることはできません。逆にそれが、わずらわしくもなく、潔い気持ちで片付けに没頭できるのでした。
 そんな中、来春に、東京から鴨川へ引っ越すことになりました。いつもの様に、新居の鍵を開け、間もなく到着する荷物を待ちます。荷物がラジオは、かばんに入れて持ってきています。ほどなく荷物が運ばれてきて、プロの手であっという間に全部の箱が部屋の中に運ばれました。さぁ、いつものようにラジオのスイッチを入れます。ダイヤルを回してチューニングをすると…流れてきたのは、な、なんと東京でいつも聞いていたラジオ局のジングル!その局のことを、私はてっきり、東京のみで放送しているものだと思い込んでいたのです。いや、良く聞いてみると、ネット局を通しての放送でもないようです。普通に都内の交通情報が流れてきます。
 引っ越しの荷物を載せたトラックを待っている間、目の前に広がる海を見ながら、「遠くに来たもんだな~」と思っていたのですが、いつもと変わらない電波が普通に届いているのでした。その後、再度ダイヤルを回してローカル局を探し、片付けに没頭したのは、言うまでもありません。